2015年9月3日 茨木市個人情報保護条例の一部を改正する条例について、反対討論

私は、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律、いわゆるマイナンバー法に対応する茨木市個人情報保護条例の一部を改正する条例について、反対の立場から討論をいたします。

まず、マイナンバー法は、赤ちゃんからお年寄りまで全国民に原則生涯変えられない12桁の番号をつけ、また企業や官公庁にも13桁の法人番号が割り当てられるものであります。市のホームページの説明では、マイナンバー制度とは住民票を有する全ての方に12桁の番号、個人番号を付番して社会保障、税、災害対策の分野で活用することで、行政の効率性や透明性を高め、公平、公正な社会を実現するための制度ですというふうにあります。

しかし、これは国の言い分をうのみにしたものであって、本来の目的を覆い隠すものでしかありません。マイナンバー制度とは、国民の基本的人権であるプライバシー権を根底から覆し、国民を徹底して管理するなど、百害あって一利なしと言っていいほどのもので、到底賛成はできません。

以下、反対の理由を述べ、皆様のご賛同をいただきたいと思います。
まず1つは、国により個人情報が一元管理され、監視、監督されることです。個人情報が将来にわたって際限なく収集される方向にあり、そうなればその分、国民のプライバシーを侵害することになると言わなければなりません。国家が収集する個人情報は、氏名、住所、年齢、顔写真、家族構成といった基本的なものに加え、給料や保有する不動産やその評価額、かかった医療機関や医療費の金額、医薬品による副作用の救済、年金の保険料や年金額、介護保険の保険料やそのサービスの利用、生活保護に関する記録、心神喪失の状態で重大な他害行為を行った人の診断や治療、受けた予防接種の時期や種類、児童手当の支給、日本学生支援機構からの奨学金など、その本人に関する全てと言える情報が記録され、マイナンバーの番号だけでその本人に関するほぼ全ての情報がわかることになります。

また、情報の活用、蓄積は、来年、2016年は国家公務員の身分証、2017年はクレジットカード、キャッシュカード、診察券のワンカード化、運転免許、教員免許、学歴証明との一体化など、拡大する一方であります。現在は強制ではありませんが、カードを持たなければ社会生活が成り立たなくなり、実質強制化をたどるのは誰の目にも明らかであります。これは国家による国民へのストーカー行為といってもおかしくはありません。本人よりも国家がその人の情報を多く持っている社会は極めて異様だと言わなければなりません。

2つは、マイナンバーで実質的に国民が総番号化されれば、人を番号や数字として扱い、仕事、収入、資産等によって人間を値段として見る風潮が生まれかねません。総番号化は人間の奴隷化です。国民が自己情報を自分でコントロールする権限を失い、国から一元管理されることで人権や尊厳、国民のプライバシーが奪われてしまうとも私は思っています。

3点目は、莫大な権益とIT利権の存在であります。制度導入には約3,000億円が必要とされ、ランニングコストは年間300億円から400億円と多額の税金が投入されようとしています。しかも、サイバー攻撃などから完全に防御しようと思えば、その費用は数兆円に上るとも言われております。
また、国は地方自治体に実施に係る補助金を十分出さず、多額の持ち出しを押しつけています。これは午前中の質疑でも明らかになったとおりであります。これはまた住基ネットと同様であり、納得できるものではありません。

さらには、自治体の財政面だけではなく、本市職員を初め、自治体職員に導入あるいは運用など、過大な負担を強いているということも指摘しておきたいと思います。

先日の読売新聞に、マイナンバー1兆円商戦として情報関連会社の期待が広がるとありました。これまた政官財のIT利権が背景にあるのは明らかであります。しかも、住基ネットで地方公共団体の情報処理を行っていた財団法人地方自治情報センターがマイナンバー制度の導入をきっかけに、機構やJ-LISと呼ばれる地方公共団体情報システム機構に変わります。これらは旧自治省出身の天下り機関であります。マイナンバーはIT利権村が国民を食い物にする制度でもあります。

4点目はセキュリティの脆弱さであります。日本年金機構がサイバー攻撃を受け、125万件の個人情報が流出した事件は、セキュリティの脆弱さ、ずさんな管理の実態を浮き彫りにいたしました。番号を行政機関だけでなく民間企業なども扱うため、情報漏えいの危険性はより高くなります。ベネッセは4,800万人分の個人情報が名簿業者に売却され、被害を受けたのは推計で4,000万人分にも上ることを明らかにいたしました。

内閣府が、先月の29日に発表した、インターネット上の安全・安心に関する世論調査によれば、日本の企業や政府機関などがサイバー攻撃を受けることに不安があるとの回答は85.7%に上っていますが、このような官民を問わない情報流出が日常茶飯事であることから、当然の数字だと私は考えています。

5点目は、政府に対する不信感であります。アメリカの国家安全保障局、NSAがメルケルドイツ首相らの主要諸国の指導者35人の携帯電話やメール、個人PCのブラウザの履歴などを盗聴、盗み見していたことが国際報道され、米欧関係に揺らぎが生じました。NSAは日本でも2006年から7年にVIP回線、例えば内閣府、日銀、経済産業省、三菱商事、三井物産など、35回線を盗聴していたことが発覚をしています。政府はこのような事態が明らかになっても強く抗議することはありませんでした。

マイナンバー制度によって全国民の個人情報が蓄積されますけれども、この情報が他国機関に筒抜けになるかもしれないと心配するのは全くの杞憂なのでしょうか。今の内閣は全く信用できません。

6点目に、共通番号が社会では問題が多過ぎて採用されていない。過去の遺物だということであります。マイナンバー制度と同様の制度を実施しているのは、韓国やスウェーデンなど、ほんの一部でしかありません。その韓国では広く民間分野で同じ個人番号が使用され、携帯電話の番号確認で販売されたため、個人番号にひもついた個人情報が大量に流出する事態となりました。

スウェーデンは高福祉、高負担を担保するため、住民登録情報ばかりか所得、資産情報も公開されており、日本がそれに倣うということは想定すらできません。日本と同じ番号制度ではありませんけれども、民間で広く個人番号、社会保障番号が使用されたアメリカでは、7%の世帯で成り済ましなどの被害に遭い、国防総省では独自番号に切りかえ、高齢者医療制度でも個人番号使用をとめる大議論が起こっております。

G8諸国でマイナンバー同様の官民共通番号制度の国はなく、ドイツやイタリアは納税分野に限定した番号制度を導入していることからも明らかなように、いわゆる先進国の番号制度ではない選択を日本はしようとしているのであります。

以上、マイナンバー法が悪法であるということを申し上げてまいりました。悪法も法だから、これは守らなければならないとの答弁もありました。悪法も法だからのいわれは、ソクラテスが無実の罪で裁判にかけられ、ソクラテスは最後まで自分は無罪と主張しましたが、最後は死を選ぶということがありました。しかし、ソクラテスは、悪法も法だからそれを受け入れて死んだわけでは一切ありません。ソクラテスの弟子であるプラトンが言うように、これは「ソクラテスの弁明」の中で言っておりますけれども、ソクラテスは自分の流儀、自分の哲学に殉じて死んだのであって、この点、ソクラテスの名誉のために言っておきたいと思います。

悪法はどこまでいっても悪法であり、それを認めては正義の実現はありません。マイナンバー法は悪法であるということを最後に申し上げ、私の反対討論といたします。

※こちらの記事は旧ホームページの内容を移植した物で、日付も当時のものです。