2016年6月30日 元海兵隊の米軍属による沖縄・女性死体遺棄事件に関する意見書に賛成討論

私は、元海兵隊の米軍属による沖縄・女性死体遺棄事件に関する意見書に賛成する立場から討論いたします。
この意見書は、沖縄県うるま市の20歳の女性が遺体で発見され、元海兵隊員の米軍属が去る5月19日に死体遺棄容疑で逮捕されるという凶悪犯罪が起きたことに対して、国会及び政府に対し、日本国民の人権、生命、財産を守る立場から、今回の事件に対し、厳重に抗議するとともに、事件の真相を究明し、日米両政府による実効性のある再発防止策と犠牲者及び遺族に対する謝罪、完全な補償を行うことを強く求めるものであります。

沖縄県では、竹富町議会が今月17日にこの件に関する意見書を全会一致で可決し、沖縄県内41市町村の抗議決議が出そろうことになりました。沖縄県における復帰後の米軍構成員等による犯罪件数は、昨年12月末時点で5,896件にも上り、県議会を初め市町村は、事件、事故が発生するたびに綱紀粛正、再発防止及び関係者への教育等を徹底するよう米軍等に強く抗議してきました。

問題は、米兵による犯罪だけではありません。昨年8月には、米軍のH60ヘリコプターが墜落し、2013年5月には、米軍F15戦闘機が漁場に墜落、同年8月にはHH60ヘリコプターが沖縄自動車道に墜落するなど、米軍機の事故も頻発に起きています。沖縄県の本土復帰後から2013年8月までに起きた米軍機墜落事故は44機にも及び、深刻な状況であります。

昨年、沖縄県議会で可決された意見書、決議16件を見ても、米軍人、軍属等に対する綱紀粛正の徹底を求めるもの4件、米軍機の安全と事故の再発防止に関するもの4件と米軍の不祥事がその半数を占めています。しかし、幾度も綱紀粛正、再発防止を求めているにもかかわらず、政府米軍は実効性のある対策をとらず、事件、事故は繰り返されてきました。

これらの事件、事故を引き起こしている米軍基地に対する県民の受けとめ方であります。6月28日の琉球新聞によれば、沖縄県が県内在住の満15歳以上75歳未満の男女2,000人を対象に、昨年8月から9月に実施した沖縄県民意識調査があります。この中で、沖縄に全国の米軍専用施設が74%集中していることについて、差別的かとの問いに、どちらかといえば、そう思うを含め、69.1%がそう思うと答えています。

沖縄県の翁長雄志知事は、昨年9月、国連の人権理事会に出席し、基地問題に関して沖縄の人は自己決定権や人権をないがしろにされています。自国民の自由、平等、人権、民主主義、そういったものを守らない国がどうして世界の国々とその価値観を共有できるのでしょうかと演説し、沖縄の基地問題は人権問題であると訴えましたが、まさにそのとおりであります。

私は、討論のために沖縄県議会の意見書、決議を見せていただきました。そこで気づくのは、県民が現在の米軍基地による被害だけではなく、今もって71年前の地上戦を引きずっているということであります。地上戦では、一般住民の犠牲者が15万人前後にも及び、県民の4人に1人が犠牲になりました。家族に犠牲者のいない家庭はないと言われ、その数は日本軍戦死者11万4人と、米軍の死者1万4人の合計を上回っています。その意見書、決議の一部を2つだけ紹介をいたします。

1つは、昨年12月の沖縄県議会で可決された学徒合同石碑の建立に関する決議です。この中には、「さきの大戦では、男女校11校、女子校9校及び共学校1校の計21校の生徒たち2千数百人が戦争に学徒動員され、約半分に当たる千人余のとうとい命が失われた」、「10代の若いとうとい命が戦場に動員され亡くなっていった事実を後世に伝え、二度とそのような悲劇が起きないよう学徒動員された21校の校名が銘記された合同石碑の建立を強く要請する」とあります。

もう1つは、一昨年3月の沖縄県戦没者遺骨のDNA鑑定実施に関する意見書であります。これには、「我が国において唯一住民を巻き込む激しい地上戦が繰り広げられた沖縄戦から69年目を迎えようとしているが、これまで収骨された沖縄戦没者遺骨18万4,000柱余のうち、DNA鑑定を実施して戦没者遺族に遺骨が返されたのはわずか4柱である」、「激しい地上戦ゆえに、死亡した軍人・軍属の戦没地点はおろか戦闘に巻き込まれた住民についての記録は皆無であり、野ざらしのまま風雨にさらされ、亜熱帯気候のため損傷が激しい戦没者遺骨が多い」と述べられています。

このような悲惨な体験を県民が共有する中で起きた今回の事件であります。19日に開催された抗議の沖縄県民大会には、6万5,000人が参加し、「怒りは限界を超えた」のメッセージが一斉に掲げられました。大会では、全員で黙祷をささげ、被害者の女性を追悼し、被害者の父親のメッセージが紹介をされました。その後に、オール沖縄会議共同代表として挨拶に立った名桜大4年の玉城愛さんは、「安倍晋三さん、日本本土にお住まいの皆さん、今回の事件の第2の加害者は、あなたたちです。しっかり沖縄に向き合っていただけませんか。いつまで私たち沖縄県民はばかにされるのでしょうか。パトカーをふやして、護身術を学べば、私たちの命は安全になるのか。ばかにしないでください」と涙ながらに訴えました。

以上、沖縄にある米軍基地がいかに県民の命や暮らしをおびやかし、人権を踏みにじっているか。また、地上戦の傷が今もって絶えていない中で、米軍基地の集中が沖縄差別と受けとめられ、県民大会でも日本本土の住民は第2の加害者ではないのか、そう指摘されたことを申し上げまして、今回の意見書は、国会及び政府に対し、日本国民の人権、生命、財産を守る立場から、今回の事件に対し、厳重に抗議するとともに、事件の真相を究明し、日米両政府による実効性のある再発防止策と犠牲者及び遺族に対する謝罪、完全な補償を行うことを強く求めるものであり、米軍基地の撤去どころか、基地の縮小すら触れていない最小限の内容にすぎません。

私は、どのような政治信条をお持ちであろうと、賛同いただけるものと確信しています。玉城愛さんの沖縄に向き合っていただけませんかの呼びかけに応えて、全議員の賛成で採択されますよう、お願いして賛成討論といたします。
ありがとうございました。(拍手)

 

※こちらの記事は旧ホームページの内容を移植した物で、日付も当時のものです。