2017年6月21日 2025日本万国博覧会の大阪誘致に対する決議 反対討論

私はただいまの質疑応答を聞いておりまして、誠実な答弁はなくて、非常に無責任な提案だと、そういう印象を受けました。2025日本万国博覧会の大阪誘致に対する決議に、反対の立場から、討論をいたします。

決議案には、いのち輝く未来社会のデザインをテーマとした国際博覧会を開催したいと立候補したとあります。しかし、東京電力福島原発事故の収束に何百年かかるかわからない、甲状腺がんの多発など、子どもの健康被害の広がりや、連日、放射能の汚染水が流れ込んでいる事態を放置し、高浜原発など再稼働を推進する政府を見るときに、いのち輝く未来社会には違和感を覚えるものであります。

また、世界中の人々の健康に係るさまざまな課題を克服し、人類の健康、長寿への挑戦はもとより、人類の未来に向けて、よりよい生活を送ることができる新しいモデルを提案することや、それを広く世界に発信するという点において、大変大きな意義があると考えられるともあります。

しかし、これまた万博推進者の多くが、イコールカジノ賭博の推進者で、今だけ、金だけ、自分だけの風潮をあおっている姿を見ておりますと、美辞麗句を用い、大言壮語しているが、内容には巧言令色の類いではないかと白けてしまいます。

以上が決議案に対する私の印象でありますけれども、大阪万博をどうしても誘致しなければならないのか、幾つかの懸念と反対の意見を申し上げたいと思います。

その1点目は、朝日新聞に掲載をされておりましたけれども、一般の人々の興味が減退し、盛り上がりに欠けている点であります。

同紙には、過去5回の万博で日本館をプロデュースした、現代芸術研究所の平野暁臣主宰は、万博は死にかけている。現場の活気の衰退はすごい。70年万博では、岡本太郎や横尾忠則など、何をやるかわからない人たちに任せ、社会にも気概と志があった。しかし、70年の成功で万博はビジネスになり、その後の国内の万博は大阪万博の変形でしかないと警鐘を鳴らしているとあります。

また、大阪万博では、アポロ11号が持ち帰った月の石は大人気で、展示されたアメリカ館は簡単には入れなかったが、愛知万博05年では、今や国内の常設展示でも見られる月の石を展示する新鮮味のなさ。大阪府は、25年万博のコンテンツとして、健康、長寿、和食、スポーツ、サブカルチャー、大阪流のお笑いなどを掲げているが、ごった煮感があるのは否めないと指摘されています。想定入場者3,000万人、経済効果は6.4兆円ともくろんでいますが、絵に描いた餅にならないかと心配するものであります。

また、安倍首相は、経済の起爆剤となると述べ、20年東京五輪後の景気浮揚策としての期待感を示しておりますけれども、経済効果を狙った誘致は万博の理念にそぐわないと指摘するものであります。

2点目は、財政面も不安であります。
基本構想で会場建設費用は、当初約1,300億円、現在は約1,250億円で進められ、政府、大阪府・大阪市、経済界がこの4月になって、3者の等分負担で大筋合意したと報道されています。05年の愛知万博でも今回同様、会場建設費1,350億円を政府、愛知県・名古屋市、経済界の3者で450億円ずつ等分負担することで同意していました。しかし、経済界から集まった寄附金は234億円にとどまり、競輪、競艇など公営競技の収益から199億円を集めた経緯があります。関西の経済界は、当初、巨額の費用がかかることに難色を示しており、経済界の応分の負担は大丈夫かと指摘するものであります。

また、2020年東京オリンピック・パラリンピックも、オリンピック誘致の際は7,340億円の予算だったものが、どんどんと膨れ上がり、2兆円となり、今では3兆円と4倍にはね上がっています。会場建設費用が結果として1,250億円にとどまるのか、政府、大阪府・大阪市、経済界の3者等分負担でうまくいくのか、大変不透明だと思っています。

次に、国や自治体が巨額な費用を負担することについてであります。
東北や熊本への震災復興が道半ばの段階で、政府が、やれ東京オリンピックだ、やれ大阪万博だと浮かれていることに、怒りに近い違和感を持っております。大阪府、大阪市に対しても同様であります。財政難を口実に、住吉市民病院の廃止や特別養護老人ホームの補助金を削減、敬老パスの有料化、赤バスの廃止、学校警備員の廃止、文楽の補助金打ち切りを進めながら、万博推進だけは多額の予算の大盤振る舞いでは、誰のための自治体運営かと言わなければなりません。

次に、地下鉄中央線を夢洲まで延伸する費用であります。
当初の700億円が、直近では540億円とされています。これについては、大阪府と大阪市は1月31日にカジノを中心とする統合型リゾートIR業者に一部負担を求める方針を示しました。これは、府と市がIR推進法の成立を受け、早ければ24年にも夢洲にカジノを含むIRを設備する計画で、夢洲までの地下鉄延伸はIR業者にも利益が大きいと判断し、負担を求めることになったものであります。しかし、540億円で済むのかの疑問に加え、カジノ絡みであることには納得できません。

3点目は、カジノを中心とする統合型リゾートIRとセットであることです。
大阪府と大阪市が地下鉄延伸の費用負担を求める以上、これまで以上にカジノを中心とする統合型リゾートに突き進んでいくことは、火を見るよりも明らかであります。

2014年厚生労働省発表によれば、国内でギャンブル依存症の疑いのある人は536万人、日本はギャンブル依存症国家と言われるほどに、ギャンブル依存症の疑いのある人の率が成人の5%と高く、米国の1.6%、オーストラリアの1%に比べても高い数字となっています。ここにカジノが参入すれば、ギャンブル依存の傾向がさらに進みます。

NHK「クローズアップ現代」の「ギャンブル依存症 明らかになる病の実態」では、家族を巻き込む悲惨な実態とともに、依存症患者の脳機能のバランスが崩れてしまうと紹介されていました。

また、カジノ、ギャンブルといのち輝く未来社会は、相反すると指摘するものであります。安倍首相が言う、カジノは成長戦略の目玉という発想は、根本的に間違っています。この点では、安倍新聞と言われる読売新聞でさえ、その社説で、そもそもカジノは賭博客の負け分が収益の柱となる。ギャンブルにはまった人や外国人観光客らの散財に期待し、他人の不幸や不運を踏み台にするような成長戦略は極めて不健全であると書いています。カジノへの批判を避けるために万博を抱き合わせてイメージアップを図りたいとの思惑も感じ、地道な行政を怠り、イベントでごまかすことばかり考える姿勢を認めるわけにはいきません。

4点目は、果たして大阪に決定するのかということであります。大阪以外にフランス、ロシア、アゼルバイジャンが名乗りを上げています。フランスは、開催地をパリ、そしてテーマは地球温暖化対策を初めとする環境、そして健康、教育、文化と決めており、最大のライバルと見られておりますが、大阪は勝ち抜けるんでしょうか。

舞洲は、大阪市が誘致に失敗した08年の五輪会場用に埋め立て開発されましたが、2001年7月、モスクワでのIOC総会第1回投票で、得票数がたった6票で惨敗しました。当時の關助役は、ほとんど市議会にも出ず、誘致目的で、年がら年中、職員らを連れて外遊していましたが、無残な結果に終わっても、磯村市長、關助役以下、市幹部らは何の責任もとっていません。

五輪や万博などの誘致は、うまくやれば誘致できるかもという幻想を市民に振りまき、御用学者がはじき出す、とらぬタヌキの経済効果を吹聴して進められます。首長以下、役人や議員らは、公費で欧州外遊などを堪能する、記者たちも海外出張できるから反対しない。財団法人の形をとった大阪五輪の招致委員会には、ほぼ全ての大手マスコミの大阪支社長など幹部が名を連ねていたと言われています。

既に一昨年のミラノ万博を視察した松井知事は、パリ詣でもしています。今後も府や市の職員、議員らは、視察目的で欧州旅行を予定しているものと思われます。しかし、欧州旅行をたっぷり楽しんだあげく、やはり博覧会国際事務局の本拠地パリは強かったで終わらせることは、許されません。

最後になりますが、2025年万博誘致の言い出しっぺは、1970年の大阪万博の企画、実施に携わり、成功をおさめた堺屋太一氏だと言われています。高度成長期の1970年の大阪万博は私の記憶にも残っておりますけれども、今は高度成長期ではありません。夢よ、もう一度と無責任に大阪万博を推進すべきではありません。

議員諸氏に決議反対の態度をとるよう、お願いをして私の討論を終わります。(拍手)

※こちらの記事は旧ホームページの内容を移植した物で、日付も当時のものです。