茨木市印鑑登録及び証明に関する条例、及び茨木市住民基本台帳カードの利用に関する条例の一部改正、第16号の手数料条例の改正について反対の立場から討論します。

議案第15号、茨木市印鑑登録及び証明に関する条例、及び茨木市住民基本台帳カードの利用に関する条例の一部改正、第16号の手数料条例の改正について反対の立場から討論します。

反対する第一の理由は本市財政にとって大きな損失を招くからです。

損失の第一は住基カードを6月からの7か月間無料化することによる損失です。
この間の経費はカード一枚840円、無料化期間中の発行数17000枚で1428万円の出費となります。
またこの無料期間の交付に要する臨時職員の経費が445万円6千円かかります。
次に無料化することによって本来市に入ってくるカード交付手数料が850万円入ってきません。
合計すると住基カードの無料化による損失額は2723万6千円に及びます。

損失の第二はこのシステム構築に関する初期費用、毎年の維持経費です。
今年度のシステム構築に関する経費は5700万円、すべて本市の持ち出しです。
システム維持経費は短期間のため安くなりますが、それでも1000万円かかります。
これも合わせると今年度のシステム構築に関わっての経費は6700万円となります。

次年度からはシステム維持経費として財団法人・地方自治情報センターに毎年500万円、機器等使用料900万円、システム保守料100万円で1500万円が飛んでいくことになります。

損失の第三は住民票などの交付手数料のうちコンビニ取り扱い分を安くすることによる減収です。現在市役所窓口による手数料は300円入っていますが、これをコンビニでは200円に安くするために100円の減収となります。

また1通に対してコンビニに120円支払うことになり、これまで300円入ってきた証明手数料は80円、これまでの26.7%しか入ってきません。しかも発行する茨木市よりも設置しているにすぎないコンビニが50%も多く受け取るという摩訶不思議な現象が現れます。このコンビニ大奉仕による減収は市が見込んでいる今年度のコンビニ発行予定枚数2万7750枚で610万円、次年度からは1220万円が減収となります。

以上コンビニでの証明書発行で生じる今年度の損失は1億33万6千円、次年度からはこれが毎年2720万円に減りますが、今年を含めた10年間では3億4513万6千円の損失を市財政に与えることになります。

反対する第二の理由は財政難が言われる中、コンビニでの交付のために、これだけのお金をつぎ込む必要性も緊急性も見当たらない点です。

まず、これらの証明書は市民が日常不断に必要とするものではありません。
ここ3年間の平均で年間の発行枚数は住民票11万2千、印鑑証明9万2千、戸籍で3万1千、課税証明で3万7千、納税証明は1600であり、総数は27万4千です。市の人口数とほぼ一致し、市民一人が1年で1枚必要とする計算となります。

しかもこの中には企業・事業所の申請がかなり占めています。またこれらの75%を占める住民票、印鑑証明は証明発行カードでも取得できます。

さらに郵送という簡便なやり方でも印鑑証明以外を除く証明書は手に入れることができます。市役所の窓口や自動交付機に出向く必要は何もなく、コンビニ交付よりもずっと便利です。

またコンビニでの発行には住基カードが必要ですが、持ち合わせていない人は役所の窓口で作成しなければなりません。年一回必要とするかどうか分からない証明書の為にわざわざ、住基カードを作る人がどれだけいるでしょうか。

市は住基カード2万枚を購入予定、無料交付期間に1万7千枚の需要があると見込んでいますが、机上の計算に過ぎないと私は声を大きくして断言するものです。
そして今回のコンビニ交付は住民の利便性よりも住基カードを持たせることが元々の狙いであり、コンビニ交付は単なるエサにすぎません。

コンビニ住民票は市民の要望が強いとの声もあります。しかし、住基カード1万7千枚同様、コンビニでの証明書発行枚数5種類で今年が2万7750枚、来年度以降は5万5430枚になるほどの要望ではないとこれまた私は断言するものです。

反対する第三の理由は評判の悪い住基カードを偏重し、市民に定着している証明カードの発行を停止することです。

住基カードの現在の発行枚数は1万8206枚、一方証明発行カードは5万5937枚で3倍以上、市民に浸透しています。住基カードは1枚当たり、1000円、1500円も国がテコ入れし、おんぶにだっこ、国の寵愛を受けて育成されてきました。それでもこの体たらくです。

直近の2009年からの3年間の大半は、1枚当たり1500円もの交付金がありましたが発行枚数は1万2千枚にとどまり、2011年度は2000枚を切る不人気ぶりです。一方証明発行カードは毎年7千枚を超え、ここ3年間の平均は7714枚、どちらを市民が望んでいるかは明白ではないでしょうか。

前回の交付金の大盤振る舞いで住基カード枚数はその時だけ若干伸びたにすぎません。今回はコンビニ業界と組んで、本市だけで特別交付税1700万円をつぎ込んでのてこ入れです。まるで原発が推進されていった時と同様、歓迎しないものを札束をまき散らして作っていった経過と瓜二つに思えて仕方ありません。

市民に浸透し、実績のある証明カードの発行を廃止してまでも住基カードに誘導する、その執拗さは異常としかいいようがありません。今回の事態はまさに木の葉が沈んで石が浮かぶ、無理が通れば道理が引っ込む類だと指摘するものです。

反対する第四の理由は市民のプライバシーが万全だということがありえない点です。
人間はミスする存在です。人間がやることに万全ということはあり得ません。「五重の壁」で閉じ込めるから大丈夫だといった原発が今どうなっているかを持ち出すまでもありません。ミスを想定したシステム作りが必要なのに、万全だと言い切るところに既に矛盾と傲慢があります。

プライバシーは憲法が保障する基本的人権です。これまでは人権を守るコストとしてわざわざ、利用目的を限定した不便な制度を作ってきました。効率的な制度を追求すれば、それは必ず人権侵害に向かうと指摘するものです。

反対する第五の理由は国家財政や自治体の財政に大きな負担を強いても自らの利権を手にしたいと考える利権村の存在です。
日立、富士通、NEC、日本IBMなどIT関連企業を中心に構成された財団法人 社会経済生産性本部 情報化推進国民会議は2005年、国に「住基ネット/カードの普及に向けた6つの提言」を行い、その中には「住基カードは国民IDカードとして一定年齢以上の国民に無料で配布すること」が含まれています。

この業界利益のために総務省が住民票コンビニ交付を推進し、NECは自社開発のソフトウェア「GPRIME/コンビニ交付」(ジープライム コンビニコウフ)を自治体に売り込んできました。

そしてこれらIT関連企業と一体で今回の住民票コンビニ交付を進めているのが財団法人・地方自治情報センターです。
このセンターは住基ネットを普及するために立ち上げられた旧自治省・現総務省の官僚の天下り機関で事業仕訳の対象にもなりました。住基ネットそのものが天下り機関を作るためのものと言われていますが、十分うなずける話です。

これまで茨木市はこのセンターに年間100万円を住基ネット管理費として貢いできましたが、今回のコンビニ住民票で500万円を追加し、計600万円を毎年貢ぐことになります。
ネットワークを繋いだだけで全国自治体から管理費を強制的に出させての殿様商売・左団扇の天下り機関には怒りしかありません。

 反対する第六の理由はこの条例がマイカード法案を準備するためものだということです。
なぜ、このような愚策に血眼になるのか、それは国民を管理支配したいと願う権力者の飽くなき欲望にあります。

国民をコード番号で識別し管理する国民総背番号制は住基ネットでとりあえず完成しました。しかし住基カードは無料化しても普及しなかったために、今度はコンビニ住民票でさらに上乗せを図りたいというものです。

政府機関による国民のプライバシー管理に対して残念ながら市民の権利意識は低いといわざるを得ません。自分たちの目先の生活や少しばかりの便利さや快適さに目がくらみ、国家による管理支配にあまりにも無頓着すぎると感じています。

やがて控えるマイカード法案は究極の国民統治システムですが、今回のコンビニ住民票がその一里塚であると指摘し、皆様のご賛同をお願いして反対討論を終わります。

※こちらの記事は旧ホームページの内容を移植した物で、日付も当時のものです。