2015年12月15日 茨木市個人番号の利用に関する条例の制定について反対討論

私は、議案第69号、茨木市個人番号の利用に関する条例の制定について、反対の立場から討論をいたします。
この条例は、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律、いわゆるマイナンバー法の施行に伴い、個人番号の利用範囲に関する事項を定めるものであり、マイナンバー法がなければ制定する必要は全くないものであります。

9月議会でマイナンバー法の施行に伴う個人情報保護条例と手数料条例の一部改正に対する討論で、この法律が第1に国が個人情報を一元管理し、個人情報が際限なく収集され、国民のプライバシーの侵害が進んでいくこと、第2に国民の総背番号化が、人を番号や数字として扱い、仕事、収入、資産等によって人間を値段として見る風潮が生まれかねないこと、第3に制度導入には約3,000億円、毎年の運営には300億円から400億円の莫大な経費がかかり、自治体にも財政の負担を押しつけ、職員にも負担を強いるものであること、さらには、IT利権の存在があること、第4にマイナンバーを統括する地方公共団体情報システム機構が総務省の天下り機関であり、政官財の利権構造が明らかであること、さらに、セキュリティの脆弱さ、今の政権の情報管理に対する不信感、そして、最後に、日本のマイナンバー、共通番号制が過去の遺物にすぎないことを指摘いたしました。

この11月、12月にマイナンバーの通知カードが各家庭に届くとともに、市民はマイナンバーに戸惑い、どうしたらいいのか迷いに迷っています。マイナンバーそのものがよくわからない。また、マイナンバーに対する考えの違いから、夫婦の溝が生じている例、許否したいと思っても会社から提出を求められ、嫌々従っている例も幾つか聞いております。

この12月議会では、マイナンバーの問題点や危険性が多くの議員から指摘をされました。
1点目は、総務省の見通しの甘さと傲慢さであります。

マイナンバーの通知カードが郵便局に到着するのが大幅におくれたこと。また、配達の際に受領印や署名が必要となる簡易書留郵便物であることから、配達する郵便局員に過重な負担を強いました。過労死寸前まで働くことが強制され、誤配も相次ぎました。通知カードのおくれは自治体や市の職員にもしわ寄せが及ぶ事態となっています。

また、本来なら地方公共団体情報システム機構、J-LISが発送した通知カードのうち、到着しなかった返戻分については、J-LISが責任を持たなければならないのに、これを自治体に押しつけるという異例の手法によって、本市の見込みでは全世帯の15%、約1万8,000通の処理に追われることになりました。

2点目は、自治体が理不尽な財政負担を強いられることであります。
本市では、システムの改修や構築、番号カードの交付に係る経費など、総額で5億5,000万円余りを要し、そのうち市負担が約3億円にも上るとの答弁がありました。その答弁を受けて、賛成する議員からも、法定受託事務でありながら、自治体にこれだけ多くの負担を強いる制度はいかがなものかとの発言が出るほどであります。

3点目は、やはりこの制度がIT利権になっていることであります。
この9月に総務省は、通知カード及び個人番号カードの交付等に関する事務処理要領を全自治体に通知いたしました。この要領には、顔認証システムが原則として全市町村で導入し活用することとなっています。この顔認証システムは4月の自民党の会議にNECが提案し、その5カ月後には国によって、ほぼそのまま採用されることになったものであります。ここ数年、繁華街に防犯カメラの設置がふえています。顔認証で個人が特定できるようになって、カード発行の義務化、常時携帯の義務化などに進めば、全ての行動が逐一記録、蓄積され、国家による国民の監視が現実化するということを私は危惧するものであります。

また、11月3日のしんぶん赤旗には、マイナンバー事業、9社で772億円独占、国民のプライバシー食い物の記事が、また、11月8日にはマイナンバー事業受注の4社が2009年から2013年にかけて自民党に2.4億円を献金しており、政官財の癒着浮き彫りとの記事がありました。顔認証システムを開発したNECは、マイナンバーで1,000億円の売り上げを目指すと言われており、これらの事実経過はマイナンバー導入が国民生活の利便性向上を口実にして、政官財の利権追求の思惑から提起されたものであることは明々白々であります。

4点目は、情報漏えい、成り済ましの危険性であります。
堺市は昨日、2011年の大阪府知事選挙のときの有権者データ約68万人分を含むファイルが外部に流出したことがわかったと発表しました。これは課長補佐が無断で自宅に持ち帰り、民間のレンタルサーバーに保存し、外部からアクセスされていたものであります。マイナンバーについては厳格な管理を行い、システム的にも情報漏えいは考えにくいと言われています。確かにこれまでの情報漏えい事件を教訓に大幅に改善されているのかもしれません。

しかし、5重の壁により放射能が漏れることはないと言われていた原発は、地震と津波であえなく崩壊。今も放射能は誰に遠慮することもなく漏れ続けております。人間のすることには意図の有無にかかわらず、誤りはつきものであり、巨大システムであればあるほど一旦事故やミスが起これば取り返しがつかなくなることは原発事故の教訓でもあります。早晩、情報漏えいや意図的侵入によって個人情報が外部に漏出することは必至であります。

5点目は、マイナンバーが民主主義に反するものであるということであります。
9月議会の討論でも一部の権力者が全国民の情報を入手するものであり、国家が国民に対してストーカー行為を働くようなものだと指摘をいたしました。民主主義とは、国民が権力者の横暴を防ぐ立憲主義を基本にして成り立つものであります。西洋の啓蒙思想を築き発展させてきたホッブズ、ロック、ルソーは、個人の生存権や幸福追求を保障するものとして国家を位置づけ、個人のための国家であることを徹底するための方策を追求してまいりました。

しかし、マイナンバー法はこれらとは反対に民主主義を後退させ、行政権の肥大化の中で、国民を国家が管理、支配する道具として整えたものであります。国家権力が個人の上に立ち、無謀な戦争を遂行してきた戦前の歴史を反省し、日本国憲法は第13条で、「すべての国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で最大の尊重を必要とする」として個人の尊重をうたっています。この憲法のもとで、私も戦後民主主義を当たり前に享受することができました。

しかし、マイナンバー法はこのような民主主義とは相入れないものであり、逆に民主主義を圧殺するものであります。自治体として国にあらがえない面もあり、今回のマイナンバー法制定に伴う条例の提案となったものでありますが、私は悪法のための条例制定や条例の改正は認められないとの立場から、今回の条例に反対するものであります。
議員皆様の反対をお願いして、討論を終わります。(拍手)

 

※こちらの記事は旧ホームページの内容を移植した物で、日付も当時のものです。